ゼレンスキー国会演説直前で右往左往する人たち【適菜収】
【隔週連載】だから何度も言ったのに 第14回
■榊英雄監督には安倍とプーチンが主人公の『蜜月2』を撮ってほしい
映画監督による性被害を女優4人が告発したという事件があった。
「週刊文春」は監督の榊英雄により、有無を言わさず性的行為を強要されたり、映画へのキャスティングをちらつかせて、なし崩し的に関係を持たされたと語る女優たちの証言を紹介。ちなみに、榊がメガホンをとった3月25日に公開予定の映画『蜜月』のテーマは「性被害」であるそうな。タイミングよすぎるだろ。文春もこのタイミングにきっちり合わせて記事を出したのだろうけど。ギャンブル依存症対策を訴えながら、カジノ誘致に躍起になる維新の会みたいなものか。
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榊には安倍とプーチンを主人公にした『蜜月2』を撮ってほしい。まあ、安倍の片思いだったわけだけど。
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《さんま、鶴瓶も驚いた…タモリが32年も「いいとも」を続けるために絶対にやらなかったこと》(「プレジデントオンライン」3月21日)という記事を読んだ。なかなか面白かった。
タモリの執着のなさや失敗を引きずらない切り替えの早さなどのエピソードを並べた上で、「計画」や「目標」という概念を否定するタモリの言葉を紹介している。
《人生成功せにゃいかん、ナンバー1にならなきゃいかん、それには何歳までにこういうことをやっておかないといかん(笑)。ダメだよ、それじゃあ。苦しくなるから》
《なんかいつも、みんな何年後かに私はこうなりたいとかいうでしょ。目標を持って努力して頑張ることが、いいことのようにいうけど、いつも違和感があったんだよね》
《目標なんて、もっちゃいけません》
《目標をもつと、達成できないとイヤだし、達成するためにやりたいことを我慢するなんてバカみたいでしょう。(略)人間、行き当たりバッタリがいちばんですよ》
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この感覚はすごくよくわかる。無暗に目標を持つことは危険だ。三島由紀夫はこう言っている。
《未来社会を信ずる奴は、みんな一つの考えに陥る。未来のためなら現在の成熟は犠牲にしたっていい、いや、むしろそれが正義だ、という考えだ。高見順はそこで一生フラフラしちゃった。
未来社会を信じない奴こそが今日の仕事をするんだよ。現在ただいましかないという生活をしている奴が何人いるか。現在ただいましかないというのが〝文化〟の本当の形で、そこにしか〝文化〟の最終的な形はないと思う》(「東大を動物園にしろ」)。
これは刹那主義的に生きることとは違う。未来に責任を持ち越さないということだ。三島は「人間というものは〝日々に生き、日々に死ぬ〟以外に成熟の方法を知らない」と言った。それは「自分は過程ではない」「道具ではない」と思うことと同じだ。タモリの感覚もこれに近い。
文:適菜 収
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